ゴジラ-1.02025/04/04

怪獣映画から人間ドラマを排したことで、『シン・ゴジラ』は目新しかったしとても面白かった。ただ、この方向性では続編が難しいだろう、かといって別のゴジラは作りにくいだろう、とも思った。
だから、7年後に公開された本作には「あれ?早いな」「大丈夫かな」という先入観を持ってしまった。観る前からなんだかモヤモヤしていたのは、そういう理由だ。

十分に面白いし良い作品ではあるけど、なぜか戦後とか、やたら海上とか、『シン』から逃げている感がものすごい。戦後にしては満たされているし、特攻にしては緩いし、設定と展開や演出がかみ合っていないのも「逃げた」結果なんだろうと思う。アメリカ向けを意識してか、時代のしがらみか、あんな結末なのもまた違う意味で「逃げた」ように見える。
一方、ご自慢のVFXはといえば、アカデミー賞の視覚効果賞で話題になったが、そんなに良かったか?というのが正直なところだ。実写に乗せたCGは美しいけど、特撮に必要な臨場感が無い。

結局、誰もやりたがらない『シン』後ををやったから皆で褒めてあげましょう、そういう高評価な気がする。とにかくこれでめでたく続編が作れるわけで、実際に作るみたいだし。よかったね。

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空の青さを知る人よ2025/01/22

気持ちのいい話だった。超平和バスターズのいわゆる三部作の中では、観た後の余韻が一番すっきりしていたように思う。

原則として、書き手が読み手より先に感動してはいけない。と、個人的には考えている。もちろん読み手(=アニメでは観る側)依存のポイントなので、普遍的な評価とはなり得ないのだが、号泣アニメと称されるような作品では、感動タイミングの微妙なズレで良し悪しが分かれる気がしている。
『あの花』は、とにかく登場人物たちが感動していて、なんだか置いて行かれた気分になった。『ここさけ』は、面白かったけどポイントが見つけにくかった。そういう意味で、この作品がちょうどしっくりきたという感じだ。若い頃に観ていたら、たぶん全然違っていただろう。

松平健、意外と違和感なかったな。

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すずめの戸締まり2025/01/21

問題は、現実に起こった震災を題材にしている点だろう。この作品に対する様々な批判の理由は、結局そこにある。この内容なら、そもそも具体的に3.11を持ち出す必要などないだろうに、というのが個人的な感想だ。

新海誠作品の特徴は緻密で美しい自然描写だ。アニメらしいデフォルメを使わずに写実的な画で惹きつけるが、そこにこだわりすぎて話が冗長になりがちでもある。本人の意図がどうあれ、描いているのはいつも風景であり雨粒であり、この作品でいえば「少女が巡るいろいろな土地」であって、設定や物語はその後ろ側にいるように感じる。

『君の名は』は隕石衝突の話ではないし、『天気の子』は大雨洪水の話ではないし、同様にこの作品も大震災の話ではない。結果的にロードムービーになったのではなく、最初からロードムービーを作っていたということに、監督自身が気づいていないだけなのではないか。そんな印象を受けた。

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かがみの孤城2024/12/05

いじめや不登校をテーマとするものに「自分もこうだった」「考えさせられる」といった高評価が集まりがちなのは、いつものことだ。ではアニメ作品としてどうかといえば、あまり良い出来とは思えなかった。

おそらく謎解きとして描いてはいけない作品なんだろう。それは単なる世界設定であって、その中で主人公たちがどう変わるかなぜ変わるかをもっと描くべきだったはずだ。表現の拙い非声優の多用とか、コナンで伏線とか、解明シーンで大仰なクライマックスとか、謎解きメインの演出がことごとく違和感を生んでいる。

原作小説で評価を得たポイントと、商業的に映像化するときの宣伝ポイントとが、ズレている印象。まあよくある話だけど。

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